サン・ジュスト大聖堂(Cattedrale di San Giusto Martire)完全ガイド|トリエステの丘に輝くビザンチン・モザイクの宝庫

イタリア·
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トリエステの象徴、サン・ジュストの丘(Colle di San Giusto)の頂に立つカテドラル。質実なロマネスクの外観と、金箔きらめくビザンチン様式のモザイクを抱く内陣が最大の見どころです。現在の姿は、14世紀に隣接していた二つの教会(聖マリア聖ジュスト)を一本の大屋根でつなぎ、5身廊の大バジリカに統合したことに始まります。1899年には小バシリカ(Basilica Minore)の称号も授与。トリエステで最も重要なカトリック聖堂です。


要点まとめ

  • 場所:Piazza della Cattedrale 2, 34121 Trieste(サン・ジュストの丘の頂上)。
  • 開館(参観)時間平日 8:00–18:30/日曜・祝日 9:00–19:30入場無料(修復維持のため献金歓迎)。礼拝・行事時は観光入場が制限されます。
  • 所要時間:内部見学30–45分+丘の史跡(城・ラピダリオ)45–60分=計1.5〜2時間が目安。
  • 撮影:フラッシュや三脚は控えるのが無難。サイド礼拝堂の照明は**コイン式(1€)**のことがあります。

見どころ(ハイライト)

1)質実な外観とゴシックの大薔薇窓

質素な石積みのロマネスク・ファサードに、繊細なゴシックのロゼッタ(薔薇窓)がはめ込まれた端正な正面。左手に寄り添うどっしりした鐘楼は、古代ローマのプロピュライオン(聖域門)を取り込んだスパリア(古材転用)で、壁面にはローマ時代の碑文や部材が数多く再利用されています。鐘楼のニッチには聖ジュスト像(14世紀)

2)5身廊が生んだ独特の内部空間

14世紀、左右に並んでいた二つの教会を中央の新しい身廊で結合し、非対称の5身廊という個性的な平面に。異なる起源の円柱・柱頭が丸アーチを受け、古層が可視化された「積層の美」を体感できます。

3)二つの側後陣に輝くビザンチン・モザイク

  • 左側後陣(聖マリア):金地に座す聖母子(テオトコス)と二天使、下段に12使徒列。制作は12世紀前半のコンスタンティノープル系工房。下段の柔らかな衣文や表情にはヴェネツィア系の手も見られます。
  • 右側後陣(聖ジュスト)キリスト・パントクラトールの左右に聖ジュスト聖セルヴォロ(トリエステの守護聖人)。様式から13世紀初頭のビザンチン系作とされます。
  • 中央後陣:20世紀に格間天井からモザイクへ更新。主題は聖母の戴冠(当時の公募で採択)。

4) 宝物礼拝堂(Cappella del Tesoro) とトリエステの象徴

宝物礼拝堂には聖ジュストの聖遺物厨子バットゥーティの十字架(13世紀)、そしてトリエステ市章の由来とも言われる**「聖セルジオのハルバード(alabarda)」**が安置。起源には諸説ありますが、錆びにも金鍍金にも反応しにくいという伝承まで残る“都市の象徴”です。

5)音の名所:マスチオーニの大オルガンと「サン・ジュストの鐘」

  • パイプオルガンMascioni社 Op.345(1922)。戦後修復で3段鍵盤+電気式へ。例年9月に**オルガン・コンサート(Settembre Musicale)**が開かれ、堂内に荘厳な音が満ちます。
  • 鐘楼の五鐘Sol2を基音とする5鐘のコンサートで、うち中央3鐘はフリウリ式揺鐘。最大鐘は1829年、ナポレオン軍の大砲を再鋳したもの。愛唱歌**「La campana di San Giusto」**はこの鐘を主題にし、パヴァロッティも歌っています。

歴史をさくっと年表で

  • 5〜6世紀:古代ローマ聖域門(プロピュライオン)跡に早期キリスト教建築。
  • 1302–1320年:ロドルフォ・ペドラッツァーニ司教の下、聖マリア聖ジュストの二教会を統合
  • 1385年:ハプスブルク帝レオポルト3世の時代、主祭壇を奉献
  • 1899年小バシリカの称号を受ける。
  • 20世紀前半:中央後陣をモザイク装飾に更新。

訪問の実用情報

開館・料金

  • 平日 8:00–18:30/日曜・祝日 9:00–19:30、無料。ミサや行事時は入場制限があります。最新は**公式(小教区サイト)**で確認を。
  • サイド礼拝堂の照明は1€のコイン式ことが多いです(公式ではなく現地体験情報)。

アクセス

  • 旧市街から徒歩で坂を上がって約15–20分。丘上には**サン・ジュスト城(市立博物館)ラピダリオ(ローマ石碑群)**も集中しており、セット見学がおすすめ。
  • 住所:Piazza della Cattedrale 2(城の住所はPiazza della Cattedrale 3)。
  • 公共交通で上まで行く場合、運行や経路は季節で変わるため市・地域観光サイトで当日確認を。

所要時間の目安(モデルコース)

  1. 正面(薔薇窓)と鐘楼外観を観察(10分)。ローマ古材の転用痕にも注目。
  2. 内部見学:5身廊の構成→左右のビザンチン・モザイク→中央後陣(30–45分)。
  3. 丘の周辺史跡サン・ジュスト城ミュージアム/ラピダリオでローマ遺物と城郭からの展望(45–60分)。

ディテールを深掘り

外観ディテール

  • ローマ古材(スパリア):正面と鐘楼にローマ時代の石材や碑文が多数再利用。入口のポータル古代の葬祭記念碑の転用です。
  • 胸像群:19世紀に加えられた3司教(のち教皇ピウス2世ほか)のブロンズ胸像に、2020年アントニオ・サンティン司教が追加。

内部ディテール

  • 船底天井(Carenato)14世紀起源だが、改修で一部近代化。中央後陣の聖母戴冠モザイクは20世紀の作。
  • 宝物礼拝堂には、聖ジュストの遺物厨子バットゥーティの十字架、そして聖セルジオのハルバード。起源不詳ながら、市の象徴として知られます。

音の魅力

  • Mascioni Op.345(1922)は、戦禍で失われた先代器(1860年トノーリ)を継ぐ大器。戦後の電気式化・3鍵盤化を経て、いまも9月の音楽祭で主役を担います。
  • 五鐘のコンサートSol2基音最大鐘は1829年ナポレオン軍砲金を再鋳という由緒。曲**「サン・ジュストの鐘」**はイタリア愛唱歌として広く歌われ、パヴァロッティの録音も有名。

写真スポット

  • 薔薇窓と鐘楼のツーショット(正面広場から)。
  • 左後陣の聖母子モザイク使徒列(黄金に輝く半円ドーム)。
  • 右後陣のパントクラトール(荘厳なキリスト像と聖人)。
  • 丘の上からの市街・湾の眺望(城壁やテラスから)。

近隣スポットと合わせ技

  • サン・ジュスト城(市立博物館):武具コレクション、ラピダリオ・テルジェスティーノ(ローマ石碑群)、城壁の展望が充実。大聖堂のすぐ隣です。
  • ローマ遺跡群:丘の斜面や旧市街にローマ劇場遺構。トリエステの多層史を体感できます。

訪問のコツ

  • 静粛&服装:現役の礼拝空間。露出の高い服装や大声、フラッシュは避けましょう。
  • モザイク鑑賞の準備:サイド後陣は暗め。1€硬貨で照明を点けられることがあるので、コインの用意を。
  • セットで半日大聖堂→城ミュージアム→城壁→旧市街の順で回ると動線がスムーズです。

参考・公式情報

  • 小教区公式(開館時間/参観案内):平日8:00–18:30、日祝9:00–19:30、無料。
  • トリエステ観光公式(大聖堂の解説):外観・内部構成、宝物礼拝堂、モザイクの概要。
  • 背景史(統合の経緯/年表/モザイク制作時期):伊語版Wikipediaほか。
  • オルガン(Mascioni Op.345)と音楽祭:器の仕様と開催情報。
  • 鐘と愛唱歌:五鐘の編成・最大鐘の由来/「La campana di San Giusto」。

記事内の時間・運行・展示は変動する場合があります。出発前に公式最新情報をご確認ください。

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