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【イギリス】アシュモリアン博物館の基本情報・歴史

イギリス·

オックスフォード大学の アシュモリアン博物館(Ashmolean Museum) は、1683年に開館したイギリス初の公共博物館であり、世界初の大学博物館として知られています。その歴史は学術的意義と同時に、当時の植民地主義とも深く関わっていますが、今日では世界的に重要な美術品や考古資料を所蔵する文化拠点として、多くの研究者と観光客を魅了しています。


起源 ― エリアス・アシュモールの寄贈

博物館の名は、収集家であり博学家の エリアス・アシュモール(Elias Ashmole, 1617–1692) に由来します。彼は膨大なコレクションをオックスフォード大学に寄贈し、1682年に博物館の設立が決まりました。そのコレクションの中心となったのは、王侯貴族に仕えた園芸家ジョン・トラデスカント父子が世界中から集めた動植物標本や工芸品でした。彼らは自宅のロンドン・ランベスに「The Ark」と呼ばれる小さな博物館を開き、そこにはポカホンタスの父ポウハタンの壁掛けや、ドードーの剥製など、当時の人々を驚かせる珍品が並んでいました。

アシュモールはこの貴重なコレクションを受け継ぎ、大学に寄贈。1683年、ブロード・ストリートに建てられた新しい建物に博物館が開館しました。ここは同時に化学実験室や講義室も備えており、一般の入場も許可されたことから、17世紀においては画期的な「公開博物館」となったのです。


18〜19世紀の変遷

18世紀になると、展示品の一部は劣化や散逸が進み、特に有名なドードーの標本は崩壊してしまいました。しかし19世紀に入ると改革が進み、自然科学の発展に合わせて1860年にはパークス・ロードに新しい「自然史博物館」が開館し、アシュモリアンの自然史コレクションの多くがそちらに移されました。

この転機を経て、博物館は考古学・美術に重点を置く方向へとシフトします。特に アーサー・エヴァンズ卿 が館長に就任した1884年以降、クノッソス宮殿の発掘を含む数々の考古学的成果が加わり、国際的にも重要な考古学コレクションが形成されました。1894年には展示施設がブロード・ストリートからビューモント・ストリートに移転し、1908年には大学美術館と合併して、現在の「アシュモリアン美術・考古学博物館」となりました。


20世紀の発展

20世紀には、インド独立後に役割を失った「インド研究所」のコレクションが加わり、東洋美術部門が誕生しました。これにより、イスラム美術から中国、日本、韓国、東南アジア、チベット、インド亜大陸に至るまで幅広い文化圏を対象とする展示が充実。今日では、中国青磁の世界最大級のコレクションや、ヨーロッパ屈指の現代中国美術コレクションを誇ります。

また、コイン・メダル室(Heberden Coin Room)、西洋美術部門、東洋美術部門、考古学部門、古代彫刻の複製を集めたキャスト・ギャラリーなど、専門部門が整備され、幅広い研究と展示活動を展開しています。


現代のアシュモリアン

2009年には全面的な改修を経てリニューアルオープンし、展示空間はより近代的で多様な文化を体験できるものへと進化しました。現在の館長は Xa Sturgis 氏で、博物館は引き続き「人類の歴史と文化を多角的に学ぶ場」としての役割を果たしています。


アシュモリアン博物館は、世界最古の大学博物館であると同時に、オックスフォード観光において欠かせないスポットです。古代エジプトの遺物からルネサンス絵画、そして東洋の美術品まで、時代と地域を越えた幅広いコレクションは、訪れる人々に「人類の知の旅」を体験させてくれるでしょう。

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