モンマルトルの石畳を歩いていると、突然壁から半身を突き出した男性像に出会います。これが**「ル・パッス=ミュライユ(Le Passe-Muraille)」。日本語では「壁抜け男」とも訳されるこの像は、作家マルセル・エイメ(Marcel Aymé, 1902–1967)の短編小説を記念して、俳優・彫刻家ジャン・マレ(Jean Marais)が1989年に制作したものです。場所はモンマルトルのプラトー通り(Place Marcel Aymé)**。観光ルートの合間に立ち寄れるユニークな“文学モニュメント”です。
小説「壁抜け男」とは?
発表年:1941年
舞台:モンマルトル(戦時下のパリ)
主人公:冴えない公務員デュティユル(Dutilleul)
物語の展開:
- 43歳で突然「壁をすり抜ける」力に目覚める。
- 上司いじめ→銀行強盗→“赤い狼”の名で有名に。
- 牢屋も自在に脱出。
- 既婚女性と恋に落ち、夜ごと壁をすり抜けて会いに行く。
- 誤って特効薬を服用してしまい、壁を抜ける途中で固まり、二度と出られなくなる…。
このラストシーン「壁に閉じ込められた男」が、まさに彫刻の姿となっています。
彫刻の概要
- 作者:ジャン・マレ(Jean Marais, 1913–1998)
- 設置:1989年、マルセル・エイメ広場(Place Marcel Aymé)
- 素材・スタイル:ブロンズ製。片足と片腕を壁の向こうに残し、困惑気味に前進する男性像。
- 意味:小説のクライマックスで“壁に閉じ込められてしまった”瞬間を表現。文学と街の記憶が融合したアート。
アクセス・行き方
- 住所:Place Marcel Aymé, 75018 Paris(モンマルトル地区)
- 最寄り駅:メトロ12号線 Abbesses または 2号線 Blanche から徒歩7〜10分。
- 周辺スポット:サクレ・クール寺院、ムーラン・ド・ラ・ギャレット、アメリ映画で有名なカフェ・デ・ドゥ・ムーランなどと合わせて巡ると楽しいです。
見どころ・楽しみ方
- 記念撮影スポット:多くの観光客が「壁から抜ける真似」をして一緒に撮影。フォトジェニックな記念写真が人気。
- 文学散歩の一環:マルセル・エイメはモンマルトルに暮らし、多くの作品をここで執筆。小説と実際の街がリンクしているのも魅力です。
- 夜の雰囲気:ライトアップはありませんが、静かな住宅街にあるため、夕暮れ以降は幻想的な雰囲気に。
豆知識
- 小説「Le Passe-muraille」は日本でも**「壁抜け男」**として翻訳出版されており、舞台や映画化もされています。
- 彫刻を作ったジャン・マレは、ジャン・コクトー作品で知られる俳優であり、芸術家としても活動しました。
- モンマルトル地区には、文学者・芸術家を記念するモニュメントが点在しており、この像もその一つ。
まとめ
「ジュテームの壁」が**“愛の象徴”なら、「ル・パッス=ミュライユ」は“文学とユーモア”**の象徴。モンマルトル散策の途中に立ち寄れる隠れた名所で、写真映えはもちろん、フランス文学の一場面に入り込むような体験ができます。
👉 おすすめモデルコース:アベス広場(ジュテームの壁)→坂道散策→ル・パッス=ミュライユ→サクレ・クール寺院。