モンテネグロのアドリア海沿岸に位置する古都コトルは、中世の城壁に囲まれた美しい街並みで知られ、ユネスコ世界遺産にも登録されています。その象徴的建築物のひとつが「聖トリフォン大聖堂(Cathedral of Saint Tryphon)」です。
歴史
創建:1166年に献堂
守護聖人:聖トリフォン(Sveti Tripun)
- 9世紀初頭、コンスタンティノープルから聖トリフォンの聖遺物がコトルに運ばれ、市民アンドリヤ・サラチェニスによって809年に最初の教会が建てられました。
- その後、12世紀に現在の大聖堂が建設され、コトルの守護聖人を祀る聖地となりました。
大聖堂は何度も地震で被害を受けています。1667年のドゥブロヴニク大地震では深刻な損傷を受け、十分な資金がなく完全な修復には至りませんでした。また1979年のモンテネグロ地震でも大きな被害を受け、近年になってようやく内部の修復が完了しています。
建築と特徴
様式:ロマネスク建築
外観:双塔が特徴的で、街のランドマークとなっています。
内部の見どころ:
- 14世紀のフレスコ画
- 主祭壇上部の石彫装飾(聖トリフォンの生涯を描写)
- 金銀の聖人レリーフ
- 聖遺物庫(トレジャリー):銀細工の聖人の手、装飾が施された十字架など、多くの宗教美術品が収蔵
この豊かな美術コレクションは、コトルの歴史的・宗教的な重要性を物語っています。
現在の役割と観光
- コトル司教区の中心であり、モンテネグロに現存する数少ないカトリック大聖堂のひとつ。
- 市庁舎として利用されていた時代もあり、市民生活と深く関わってきました。
- 今日ではコトルを代表する観光名所であり、聖トリフォンはコトルの市章にも描かれています。
まとめ
聖トリフォン大聖堂は、単なる宗教建築ではなく、コトルのアイデンティティそのものを体現する存在です。度重なる地震に耐えながら修復され続けてきた姿は、港町コトルの歴史と人々の信仰の象徴といえるでしょう。アドリア海の中世都市を訪れる際には必ず足を運びたいスポットです。